ダブリングの基本概念とその応用
ダブリングは、全体の要素数がN個あって1回移動した時にどの要素に到達するのか定まっているとき、「K個先の要素を求めるのに \(O(K)\) かかる」ような状況において
- 前処理:\(O(N \log K)\) 時間, \(O(N \log K)\) 空間
- クエリ:\(O(\log K)\)
で行うことができるようにするアルゴリズムです。
繰り返し二乗法もダブリングの一種と捉えることができ、最近共通祖先(LCA)の計算にも利用されます。
アルゴリズム
ダブリングによるK個先の要素の求め方:
- 前処理:「doubling[k][i] : \(i\) 番目の要素から \(2^k\) 先の要素は何か」を以下の式を利用して計算
- doubling[k+1][i] = doubling[k][doubling[k][i]]
- クエリ:前処理した結果を利用して K 個先の要素を求める
- 現在地を now として、\(K\) を2進数として見た時の全ての桁について以下を行う
- \(K\) の \(k\) 桁目 が 1 ならば now = doubling[k][now] とする
- 現在地を now として、\(K\) を2進数として見た時の全ての桁について以下を行う
※前処理では以下のような計算をします。
- それぞれの要素について 1 個先の要素が何か記録
- 前の結果を利用して、それぞれの要素について 2 個先の要素が何か記録
- 前の結果を利用して、それぞれの要素について 4 個先の要素が何か記録
- 前の結果を利用して、それぞれの要素について 8 個先の要素が何か記録
- 前の結果を利用して、それぞれの要素について 16 個先の要素が何か記録
- …
\(2^k\) 先の要素が分かっていれば「 “\(2^k\) 先の要素" の\(2^k\) 先」を簡単に求めることができるので、「\(2^{k+1}\) 先の要素が何か」を高速に求めることができます。
※クエリでは、前処理した結果を利用しています。繰り返し二乗法について見るとイメージしやすいと思います。
計算量
K個先の要素を求めたい時の計算量は以下のようになります。
- 前処理:\(O(N \log K)\) 時間, \(O(N \log K)\) 空間
- クエリ:\(O(\log K)\)
問題例: ABC167 D – Teleporter
町が \(N\) 個ある。町 \(i\) から町 \(A_i\) に移動することを K 回繰り返す。
町 1 から始めた時、最終的にどの町にたどり着くか?
制約
- \(2 \leq N \leq 2 \times 10^5\)
- \(1 \leq A_i \leq N\)
- \(1 \leq K \leq 10^{18}\)
考え方
単純にシミュレーションすると、O(K) の計算量になって間に合いません。
そこで、ダブリングの考え方が使えます。
- doubling[k][i] : 町 \(i\) から \(2^k\) 先の町はどこか?
という情報を前計算することで、
- 前処理:\(O(N \log K)\) 時間, \(O(N \log K)\) 空間
- クエリ:\(O(\log K)\)
計算することができます。
他にも、周期性を利用した解法などもあります。詳しくは D – Teleporter 解説 (AtCoder Beginner Contest 167) を見て下さい。
C++ での実装例
#include <bits/stdc++.h> using namespace std; using ll = long long; int main() { ll N, K; cin >> N >> K; vector<int> A(N); for (int i = 0; i < N; i++) { cin >> A.at(i); A[i]--; // 0-indexed に変更 } int logK = 1; while ((1LL << logK) <= K) logK++; // doubling[k][i] : i番目から 2^k 進んだ町 vector<vector<int> > doubling(logK, vector<int>(N)); for (int i = 0; i < N; i++) { doubling[0][i] = A[i]; } // 前処理 doubling の計算 for (int k = 0; k < logK - 1; k++) { for (int i = 0; i < N; i++) { doubling[k + 1][i] = doubling[k][doubling[k][i]]; } } int now = 0; for (int k = 0; K > 0; k++) { if (K & 1) now = doubling[k][now]; K = K >> 1; } cout << now + 1 << endl; }
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