グラフにおける関節点(Articulation Points)を検出するアルゴリズム
連結グラフにおける関節点(切断点)とは、「グラフから取り除くと、グラフが非連結になってしまうような頂点」のことを言います。
※「連結」とは任意の2頂点間を行き来できることを言い、「非連結」は逆に行き来できない頂点があることを言います。(くわしくはグラフを参照)
以下の図における赤い頂点が関節点です。
非連結グラフにおいては、「グラフから取り除くと、グラフの連結成分の数が増える頂点」を関節点と呼びます。
アルゴリズム
関節点を求める単純なアルゴリズム:
- 全ての頂点 v に対して以下を実行する
- v をグラフから取り除く
- グラフが非連結かを確認する(幅優先探索か深さ優先探索で確認ができます)
- v をグラフに戻す
lowlink を用いた効率的なアルゴリズム:
- 適当な頂点から、DFS で以下を計算する
- ord[u] : DFS で頂点 u を何番目に探索したか
- low[u] : u からの後退辺を高々1回まで用いて到達できる頂点 w について、ord[w] の最小値
- 以下の2つの条件のどちらかを満たす点が関節点
- u が DFS tree の根(root) で、子が2つ以上存在する
- u が DFS tree の根(root) でなく、頂点 u のある子 v について ord[u] ≤ low[v] を満たす
※ DFS tree (深さ優先探索木)は、DFSでグラフを探索する際に通る辺や頂点の集合のことです。これは木になっています。
※ 上述のアルゴリズムは、以下の「頂点 u が関節点となる条件」が元になっています。
- 以下の2つのどちらかが成立すれば u は関節点
- u が DFS tree の根(root) で、u は少なくとも 2 つの子を持つ
- u が DFS tree の根(root) でなく、子として以下を満たす頂点 v を持つ
- v を根とする DFS tree の部分木において、u の祖先への後退辺を持つ頂点が存在しない
※ ある辺 (u,v)が橋(bridge)であるときは、ord[u] < low[v] を満たします。
計算量
- 単純なアルゴリズム:O(V(V+E))
- lowlink を用いたアルゴリズム:O(V+E)
C++での実装例 (lowlink)
struct Edge { int to; }; using Graph = vector<vector<Edge>>; using P = pair<long, long>; /* Lowlink: グラフの関節点・橋を列挙する構造体 作成: O(E+V) 関節点の集合: vector<int> aps 橋の集合: vector<P> bridges */ struct LowLink { const Graph &G; vector<int> used, ord, low; vector<int> aps; // articulation points vector<P> bridges; LowLink(const Graph &G_) : G(G_) { used.assign(G.size(), 0); ord.assign(G.size(), 0); low.assign(G.size(), 0); int k = 0; for (int i = 0; i < (int)G.size(); i++) { if (!used[i]) k = dfs(i, k, -1); } sort(aps.begin(), aps.end()); // 必要ならソートする sort(bridges.begin(), bridges.end()); // 必要ならソートする } int dfs(int id, int k, int par) { // id:探索中の頂点, k:dfsで何番目に探索するか, par:idの親 used[id] = true; ord[id] = k++; low[id] = ord[id]; bool is_aps = false; int count = 0; // 子の数 for (auto &e : G[id]) { if (!used[e.to]) { count++; k = dfs(e.to, k, id); low[id] = min(low[id], low[e.to]); if (par != -1 && ord[id] <= low[e.to]) is_aps = true; // 条件2を満たすので関節点 if (ord[id] < low[e.to]) bridges.emplace_back(min(id, e.to), max(id, e.to)); } else if (e.to != par) { // eが後退辺の時 low[id] = min(low[id], ord[e.to]); } } if (par == -1 && count >= 2) is_aps = true; // 条件1を満たすので関節点 if (is_aps) aps.push_back(id); return k; } };
アルゴリズム(lowlink)の考え方と正当性
深さ優先探索(DFS) でグラフを探索することを考えます。DFSでグラフを探索する際に通る辺や頂点を考えると、これは木になっています。この木を DFS tree (深さ優先探索木)と呼ぶことにしましょう。
DFS tree で用いられなかった辺を「後退辺」と言います。
DFS tree において、以下の2つの条件のうちどちらかが成立すれば、頂点 u が関節点であると言えます。
- u が DFS tree の根(root) で、u は少なくとも 2 つの子を持つ
- u が DFS tree の根(root) でなく、子として以下を満たす頂点 v を持つ
- v を根とする DFS tree の部分木において、u の祖先への後退辺を持つ頂点が存在しない
下の図で言えば、頂点1 が条件1・頂点2 が条件2 を満たすので、この2つが関節点です。後退辺は、頂点2と頂点4の間にある辺だけです。
アルゴリズムとするために、DFS で関節点のための値を取得しましょう。
- ord[u] : DFS で頂点 u を何番目に探索したか
- low[u] : u からの後退辺を高々1回まで用いて到達できる頂点 w について、ord[w] の最小値
以上の値を利用すると、u が関節点となる条件は以下のようになります。
- u が DFS tree の根(root) の時、子が2つ以上存在する
- u が DFS tree の根(root) でない時、頂点 u のある子 v について ord[u] ≤ low[v] を満たす
この low[u] のことを lowlink などと言います。
グラフ上での関節点の意味
グラフをネットワークとして考えると、関節点はネットワーク上の脆弱性を表現しています。関節点に障害が発生すると、ネットワーク全体が非連結となってしまうのです。
故に関節点は信頼性のあるネットワークをデザインする際に考慮されます。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません